クリスマス・ハネムーン【ML】

「私の中では、螢の代わりになる者は、誰も居ない。
 けれども。
 君の中には、私の代わりになる者は、いたんだな」

 そう、言って、ハニーは魂の千切れそうな、寂しげな声を出した。

「人の心は、変わるものだ。
 螢が、闇の世界から抜け出して。
 ちゃんと、前を見つめて歩き出せるように、なったみたいに。
 それなのに、私の存在が、君を、元の世界に引き戻す原因なのだとしたら。
 私は、君を諦める。
 ……なるほど。
 新しいパートナーが警官ならば。
 私が居なくても、君が、二度と道を踏み外すことは、ないだろうな」

 心の痛みの隠しきれない、ハニーの言葉に。

 僕が、何も言えずに黙れば。

 今度は、岩井が、ケッ、と喉を鳴らした。

「ちぇ!
 タダでさえ、イラついてんのに。
 男同士の愁嘆場(しゅうたんば)なんて、まともに聞いてられっか、莫迦莫迦しい!
 要は、アレだろ?
 お偉い博士さまがケイに振られて、フリーになった、ってことだよな?」

 とてもざっくりと、状況を把握したあげく。

 肩をすくめて、岩井が言った。

「確かに、ケイを連れ帰るのは、面倒くさそうな状況だが。
 オレとしては、今は、お前の方に興味があるぜ?
 ……霧谷博士」

 岩井は、物欲に駆られた、豚のような表情(かお)をして、ハニーを見た。

「お前が出来る、喧嘩の仕方について、もっと、細かく、聞きてぇな?
 強力な毒ガスだって?
 ワクワクするぜ?
 それに、お前を押さえておけば。
 警官に飽きたケイが、戻って来るだろうしなぁ?」

 そう、岩井は、愉しげに笑った。