クリスマス・ハネムーン【ML】

「恋人のために、裏社会に入る、なんて泣かせる話じゃねぇか?」

 岩井は可笑しそうに笑った。

「だけどな。
 こっちの世界だって、実力がモノを言うんだぜ?
 まともに喧嘩一つ出来ねぇ、軟弱なお前に、何が出来るって言うんだよ?」

 足手まといは、いらねぇよ? と。

 誘うような、岩井の猫なで声に、僕が警告する間もなかった。

 ハニーは、岩井に、挑むように、口を開いた。

「ああ。
 私の手は、拳を握るようには出来ていないな。
 だけども、本気で、人を傷つける気になったら。
 君達の誰よりも、私の方のが凶悪だという自覚と……自信がある」

「ハニー……!」

 これ以上は深入りするな、と続けたかった僕の言葉を、岩井は封じて、ハニーを促した。

 その、誘いに、ハニーがノる。

「君達がその自慢の拳で直接傷つけた人間は。
 一人あたり、せいぜい、百人、それに満たないはずだ。
 けれども、私に、やらせれば。
 ケタ違いの犠牲者を出すことが出来る」

「やけに、大きく出るじゃねぇか。
 ガセネタじゃねぇだろうな?」

「……ふ。
 私に、材料と道具があれば。
 昔、日本で撒かれて大騒ぎになった、毒ガスや。
 それよりも、さらに強力なヤツを合成出来る。
 ばらまく条件と、風向きにもよるが。
 街中の人を含めた生き物全てを、死滅させることが出来るんだ。
 ここの国の環境保護団体が。
 私を目の敵にする理由は、ある。
 命を狙われることだって……螢のせい、ばかりじゃない」

「へぇええ~~!」

 岩井が、価値を計るように、ハニーをじろじろ眺めて、相づちを打った。

 ハニーは、出来ないことは、言わないし。

 もし、ハニーが、裏社会に入ったら。

 岩井は、彼が宣言したことをやらせるつもりだろう。




 ……そんなこと、させない。


 ハニーに、人殺しなんて、絶対にさせるもんか。