とても、とても珍しい。
岩井の至極真面目な言い草に、僕のクスクス笑いは、酷くなった。
それこそ、本当に、何を今更。
岩井は、今まで欲しいモノがあれば。
誰に断ることもなく。
勝手に、自分のモノにしてきたくせに。
……でも、そんな珍しく、行儀良く言ったって。
「………僕のカラダは、やれないよ」
クスクス笑い続ける僕に、岩井は、ぎゅっと眉を寄せた。
「ああ?」
「僕のカラダは……心も全部。
とっくに人にあげちゃって、僕のモノじゃないからね……
例え死んでも、あんたのモノには、ならないよ……」
海岸に、戻った早々。
二人とも、体力を使い果たし。
僕たちは、揃って砂浜に這うように、両手と膝をついた。
のに。
岩井は、キレて、僕を睨んだ。
「なんだと?
そんなモノ、誰にやったって言うんだよ!」
そんな。
荒い岩井の声に。
とても、落ち着いて聞こえる。
静かな低い声が重なった。
「その男(ひと)の全ては。
私のモノだからだ」
ハニー……!!!
海から、逃れ。
手足を砂浜についた、僕の目の前に。
愛しいひとが、いた。
やはり、病室から、僕たちの姿を見つけてきたのか。
かなり、ラフな部屋着に、裸足で立っていた。
夜が明けて。
ぼちぼち観光客や地元民が出てくる時刻だったけれど。
そんなことを無視した外見の乱れようと、言葉使いが奇妙に正反対なことを、鑑みると。
ハニーは、あらゆる感情を押し殺し。
暴れ狂う心を相当、自制しているようだった。
だから、ほら。
ほとんど無表情に見えるのに。
緑色の瞳だけが、怒りに燃えている。



