……違う、と言いたかった。
けれども、それは、紛れもない事実で。
僕は、岩井から、短剣を突きつけられる。
物理的に、シャワーを浴びれば、キレイになってしまうモノでなく。
一週間もすれば、癒えてしまう傷ではなく。
僕は、汚い、と。
改めて、自覚させられる言葉が、僕を傷つける。
……僕には、抗う資格さえ、ないのか………?
急に、暴れる力を失って。
岩井に体重を預ければ。
僕の抵抗と波の力で、かなり体力を消費したらしい。
岩井は、明らさまにホッとした顔をして、岸に向かって、戻り出した。
そんな岩井に、僕は聞く。
「……岩井。
一つだけ、教えて」
「何だよ」
「……どうして、僕が、ここに居るのが判ったんだ?」
僕の質問に、岩井は、ふん、と鼻で笑った。
「どうしたも、クソも。
ここは、お前の入院してた病院から、そんなに、離れちゃいねえ。
お前の居た、十階の病室から、浜を見れば。
人影が、一つだけ見えたからな。
多分、お前じゃねぇかと思って来たんだ」
「………」
……なんてことだ。
凄く、笑える。
何もかもから逃げようと。
夜に、あれだけ必死に、歩いて来たつもりだったのに。
そんなに、離れていなかったなんて……!
思わずこみ上げて来る、僕のクスクス笑いを耳元で聞いて。
岩井は、押し寄せて来る波と格闘しながら、怪訝な顔で、僕を見た。
「何が、可笑しいんだ?
一人で勝手に壊れてんじゃねぇよ!
それより、どうせ死ぬつもりのいらねぇ、カラダならさ。
オレにくれよ?
昨日の夜は、すげぇ、よかったぜ?
女なんて、メじゃねぇよ。
今度は、もっと優しく。
大事に、抱いてやるからさぁ」



