嵐になりそうな気配に、海は、荒れていた。
遠浅の浜の上を、天使の梯子の光の筋は、散々に揺れて。
沖に向かって、歩く僕の足元を濡らす海水は。
膝を超えたあたりから。
侵入者を、転がしてやろう、と思っている生き物のように。
僕に向かって、牙を剥く。
それでも、当初の目的を半分忘れかけるほど。
転ぶもんかと、意地になって、歩き続けて。
海水が、僕の胸から首のあたりまで、迫り。
ともすると、口の中に入って来た海水に咳き込む、頃だった。
聞き覚えのある声が、僕に向かって、響いた。
「な……に、やってんだよ! くそ!
止まれよ!
てめぇ!
今、助けてやるから、そこを、動くな!!」
声は、元気良く騒ぎ立てると。
どばどば、ばしゃばしゃと海水を跳ね返して。
他にも色々、盛大に、悪態をつきつつ、僕に近づいて来た。
雲の切れ目から光の射す、荘厳な景色を見ながら。
静かに海に入りたかった僕が。
怪訝に思って、振り返れば。
ナイロン製のような、下品な黄色い髪をした男が、アロハシャツに単パン姿のまま。
自分自身も、溺れそうになりながらも、ずかずかと。
ものすごい勢いで僕に迫って来るところだったんだ。
「岩井……!」
「は!
助けに来た、兄貴分を呼び捨てにするなんざ。
良い度胸じゃねぇか、ケイ!」
「あんたの助けなんて、いらねぇよ!
放って置いてくれ!」
ちく……しょ!
一体、ダレのせいで、僕が。
こんな想いをしていると思っているんだよ!



