ハニーが、死んでしまうなら。
僕の方が、いっそ。
泡になって……消えてやる……!
そうとでも思わないと。
僕自身の方が。
心から愛しているハニーと、別れることなんて出来なかった。
人魚姫も本当は、きっと。
長い、葛藤の上。
陸で暮らすことも、海の底に戻ることもできずに。
泡になってしまったのだ。
空を見上げれば、夜は、すっかり明けて。
目の前に広がる、海の上空の雲の切れ目から。
光の筋が、カーテンのように、揺れていた。
薄明光線って言うらしい。
この現象は、天使の梯子(はしご)とも言うんだだっけ。
もし、この光の下にたどり着けることが出来たなら。
僕でも泡になって、天国に昇れるのだろうか?
それとも。
罪に汚れた僕には。
悪魔が出て来て、奈落の底に、引きずり込むんだろうか?
積極的に、死ぬ気はなかったけれど。
なんとなく。
自分が、梯子の下にたどり着いた時の風景を見たくなる。
比喩とはいえ。
自分が『人魚』なんだとしたら。
海に抱かれて眠るのも、そう悪く無いような気がした。
僕は、きしむカラダを励まし、立つと。
海に向かって、一歩を踏み出した。
……僕の持つ、最後の力を振り絞って。



