クリスマス・ハネムーン【ML】

「ウイスキーをストレートで、一本半ですって!?
 何を考えてるんです!
 無茶ですよ!」

「佐藤!」

 黙れ! と。

 言葉の奥に滲ませて。

 僕は何も知らない佐藤の名前を呼んだ。

 岩井の性格が、変わってなかったら。

 黙っていれば、酒を三本ぐらい飲まされた挙げ句。

 殴る蹴るの暴行か。

 痛覚が鈍くなるからって。

 酒は一本ぐらいで切り上げて、あとは、両手の爪が無くなるかな?

 ……ぐらいの感じを見積もっていたのに。



 自分のやり方を妨害されたり。

 相手に自分の知らなかった弱みがあることに気がつくと。

 岩井の責めは、大抵もっとキツくなる。

 だから、ほら。

 佐藤の言葉に、食いついた。

「ナニが無茶だよ?
 コイツは、元々水商売をしてたんだぜ?
 ボトル、一本半なんて、少ない方だ。
 お優しい下戸バージョンじゃねぇか?」

 そんな、岩井の猫なで声に、騙されて、佐藤は、大きな声で言った。

「螢さんに、お酒を飲ませたら、ダメですってば!
 なんでも、嫌酒剤ってヤツで禁酒してて。
 昨日も、ワインを少し飲んだだけでも、相当苦しんだのに! 」

「……へええ~~
 知らなかったよ」

 佐藤の言葉に、岩井は顔を歪ませるように笑った。

 莫迦! と。

 僕は、心の中で、毒づいたけれども、遅かった。

 キャビネットから、ジンだのウォッカだの、やたらアルコール度数の高い酒を選んでいた、岩井の手が止まり。

 備え付けの冷蔵庫から、ビールを一本取り出した。

「まさか。
 勇名をはせた『雪の王子』がビール一本ぐらいで、へばるとは、思えねぇがよ?」

 そう、僕に500ml缶のビールを押し付けて来たのを振り払う。

「……全くだよ。
 僕を何だと思ってるんだ。
 今更、こんなビールなんて子供の飲み物なんて飲めるか!
 久しぶりに、ウォッカの一気飲みを見せてやるから、そっちをよこせ!」