「何を悩んでるか、美人のお姉さんに話してください。アドバイスくらいはできますよ」


「・・・・・・」


今まで、秋生さんや政人、同じようにピアノをやっている詩織にも相談してきた。


それらを通して思ったことは、これは俺の問題だと言うことだ。


俺自身が払拭できなければ、意味が無い。


誰に何を言われようと、それは変わらないのだ。


だが、相談することで、父さんの影を払拭する糸口が見つかるかもしれない。


「そうだな・・・」


だから、俺は話した。


俺の父が、月島光一だということ。


俺の演奏が、父さんのようだと言われていること。


それが鬱陶しくなっていって・・・


父さんに対するコンプレックスを抱えていること。


すべて話した。


その間、新藤は微笑みながら話に耳を傾けていた。


一通り聞き終えた後・・・


強い口調で言った。


「・・・それは、甘えなんじゃないですか」


「・・・・・・」


「あなたは、お父さんのせいにして、自分の音を見失っているだけです」


「・・・・・・」


今までに聞いたことのない意見だった。


・・・そういう捉え方もあるのか。


「私に言えるのはこれだけです。あとは、あなたの問題ですよ」


「・・・ああ」


解決できたわけじゃないけど。


相談してよかった、と思った。