永遠の翼

俺と新藤は、教会の椅子に並んで座る。


「いい演奏だったと思いますよ」


新藤がそう口にする。


「そりゃどうも」


「まるで、月島光一のような演奏でしたよ」


「・・・・・・」


・・・父さんの名前が、また出てくる。


いつもそうだ。


「・・・どうしましたか?」


新藤が俺の顔を覗き込んでくる。


「いや・・・・・・」


俺は首を振る。


「・・・何か、悩んでるんですね?それも、ピアノのことで」


新藤が唐突に訊いてくる。


「・・・なんでそう思う?」


不機嫌な声で訊き返す。


「そういう音でしたし、今も悩んでるような顔ですから」


微笑みながら、さらっと言う。


「あんた、いったい・・・」


「プロのピアニストですよ。もっとも、今は休業中ですが」


「そっか・・・」


そう言えば、初めて会ったときにピアノを弾いていた。


あの腕前も、プロだと言うのなら納得がいく。


俺が聴いても、すごいと思ったのだから。