永遠の翼

演奏を終える。


―――違う。


俺が奏でたいのは、こんな音じゃない。


俺は椅子にもたれかかる。


そんなとき、入り口の方からパチパチと拍手の音が聞こえた。


音の聞こえてきた方を振り向く。


雪のような白い肌。


長い黒髪。


黒いダッフルコート。


その姿を見て、思わず立ち上がってしまう。


「新藤茜っ」


俺はその女性の名前を呼んだ。


「失礼ですよ、月島さん。人の名前をフルネームで呼ぶなんて」


クリスマスのときと変わらず、微笑みながら言う。


「じゃあ、なんて呼べばいいんだ」


「そうですね・・・」


少し考えこむ。


「茜お姉ちゃん、なんてどうですかっ♪」


「やめてくれ」


「・・・・・・・」


少しの沈黙の後、呆れたように言った。


「本っ当に、冗談の通じないひとですね・・・」


「俺は生真面目だって言ったろ?」


「忘れていました」


「あんたの頭は鳥並か」


「どうでもいいことは忘れる主義なので」


主義とかの問題ではない気がする。