永遠の翼

・・・俺は、父さんの影。


薄々そう感じ始めたのは、一年ほど前だった。


―――父さんのように、上手い。


―――父さんのような、美しい演奏。


そう言われるのを、昔は嬉しいと感じた。


父さんは、俺の目標だったから。


だが、俺がピアノを弾くたびに、父さんの名前が出てくる。


段々それが鬱陶しくなった。


それでも、俺はピアノを弾きつづけた。


好きだから。


大好きだから。


・・・決定的だったのは、去年、東京で行われたコンクール。


そこで金賞を取ったときだった。


―――お父さんみたいでしたよ。これからもお父さんのように、頑張ってください。


審査員の人に、そう言われた。


それで気づいた。


皆、俺の演奏じゃなく・・・


『父さんのコピー』の演奏を聴いていたんだ。


それを、評価したんだ・・・


『父さんのコピー』の演奏を、評価したのだ。


それ以来、俺は時折、父さんの影にさいなまれるようになった。


悪夢として、夢にでてきたこともあった。


そして・・・


俺はそれを、払拭できずにいた。