詩織と並んで歩く通学路。


他愛ない話に花を咲かせる。


「あ。そういや、詩織」


その中で、ふと思い立つ。


「なに?」


詩織がこちらを向いて訊く。


「音羽って知ってるか?」


「音羽?ああ、優ちゃんのこと?」


「優ちゃん?」


「下の名前が優子だから」


「ああ、そっか・・・」


そういやそんな名前だったな。


「で、優ちゃんがどうしたの?」


ニコニコ顔で尋ねてくる。


「いや、別に。知ってるのかと思って」


「同じクラスの友達だよっ」


「ふーん。お前、俺がピアノやってること・・・あいつに話した?」


「なんか、ずいぶん親しそうだねっ」


からかうような顔で言う。表情がコロコロ変わる奴だ。


「からかうなよ。で、どうなんだ?」


「盛り上がる話題でもないし・・・話してないよ。でもどうしてそんなことを?」


「いや、ちょっとな」


なら、やっぱり・・・


音羽は音楽をやっているか・・・やっていた、かのどちらかだ。


そう確信した。