『あらあら、困った娘ですねぇ』


『・・・何がですか?』


『こんな雪の中、傘も差さずにいたら、寒いでしょうに』


「彼女はその言葉で、自分の身体が震えていることに気が付きました。


そして・・・」


『う・・・・・・


うわぁぁぁん・・・私・・・私はぁっ!!』


「彼女は堰を切ったように泣きました。


子供のように、声をあげて・・・


ただただ、女性の胸の中で、泣きじゃくりました」


『大好きだったのにっ!!


ヴァイオリンが、大好きだったのにっ!!


もう、できないよぉ・・・


夢も、叶え・・・られないよぉ・・・


お父さんとの約束も、果たせないよぉ・・・』


「女性は何も言わずに、そばにいてくれました。


暖かかった。


女性の胸は、とても暖かかったのを覚えています。


その後、女性の家に誘われて、この言葉をもらいました」


『人生は、幸せと言う名の宝捜しです。


・・・宝物は、ひとつだけじゃありませんよ』


「そして、彼女は・・・宝捜しを始めたんです」