「ある日、彼女の父親は病気になりました。


余命はあと僅かだと、医者に告げられました。


ずっと、自分を育ててくれた父親。


そのひとがいなくなる。


それは悲しいことでした。


・・・とても、辛いことでした。


でも彼女は・・・


生きている以上、死はいつか訪れるもの。


悲しみのなかで、そう考えました。


だから、せめてもの恩返しに。


彼女の父親に、ヴァイオリンを聴かせました。


そのときの父親の表情は、とても安らかなものでした。


それを見て、彼女は気づいたのです。


音楽はひとを幸せにできると。


そして、父親と約束しました。


プロのヴァイオリニストになると。


父親が亡くなって・・・


彼女は今まで以上に音楽に没頭しました。


ただひたすらに、音を奏で続けました。


父親との約束。


それが、彼女の生きる希望でした。


でも、その約束は・・・


果たされることはなくなったんです」