「昔・・・水瀬の街に、ひとりの少女がいました。


その少女は、母親を早くに亡くしました。


それからは、父親とふたりきりで暮らしていました。


少女は、たいした希望も無く人生を過ごしていました。


友達と遊んでも、何かが足りない感じ。


そんなときに彼女が出逢ったのが、ヴァイオリンでした。


弦から響き出す、美しい音色。


彼女はそれにひかれました。


彼女はすぐにヴァイオリンが好きになりました。


彼女はどんどんと腕を上げていきました。


中学に入学するころには、コンクール荒らしとして名をはせるようになりました。


それを見て、彼女の父親はとても喜びました。


彼女もそのたびに嬉しくなりました。


大好きだったから。


父親のことが、大好きだったから。


大好きなヴァイオリンを弾いて、大好きな父親の笑顔を見る。


それは幸せな日々でした。


彼女はずっと、そんな日々が続いていくと思っていました。


ずっと、大好きな父親の笑顔を見ることができると思っていました。


けど、それは違いました。


永遠なんて、ありませんでした。


幸せは、長くは続きませんでした」