永遠の翼

演奏を始める。


美しい旋律。


ゆったりとしたテンポ。


この曲は、狭い部屋で暮らす夫婦を連想させた。


日常の風景。


幸せな風景。


それらの風景が思い描かれた。


最初に会ったときに、新藤が弾いていた曲だ。


なぜ彼女がこの曲を弾いていたのか。


俺に託したか。


なんとなく分かる気がする。


欠けていたピースが、ひとつ埋まった。


そんな感じだ。


演奏を終える。


俺の心は、満足感で満たされていた。


そして、ひとつの疑問点が浮かぶ。


「誰が作ったんだろうな、この曲」


一般に流通している曲じゃない。


自主制作の曲なのだろうか。


だとしたら、すごい才能だと思う。