永遠の翼

演奏を終える。


弾いたのは、小学生が弾くような曲ばかりだ。


難しい曲をうまく弾くだけが音楽じゃない。


音楽を、純粋に楽しみたい。


それさえできれば、曲の難しさは関係なかった。


新藤から拍手があがる。


「面白いですね、月島さんは」


「どうして」


「小学生が弾くような曲を弾いたりして、何がしたいんですか?」


「あんたも、『それはいいと思います』とか言ってたじゃないか」


「まさか本当にやるとは思いませんでしたから。でも、原点に返ってみるのはいいことだと思いますよ」


街で新藤に会うたびに、俺は自分の音探しについて相談していた。


ヘンな奴だが、俺よりも高い実力を持ったピアニストであることに変わりはない。


なんだかんだ言っても、新藤には感謝している。


新藤は、自分が欲しい答えを言ってくれる。


そう思わせる人間なのだ、彼女は。


不思議な奴だ、と思う。


「・・・わたしに見とれていましたか?」


じっと見ていたからか、新藤が俺に尋ねる。


「あんたのそのギャグは飽きた」


「あ、ひどいっ!こんな美人に向かって失礼ですよっ!」


「自分で美人言うな」


少しずつだが、俺は前に進めている。


あの、クリスマスの日に優子と新藤に会って以来。