永遠の翼

学校が終わった後、教会に行く。


家でも練習はできるが、学校帰りのときはここで練習する。


俺はここが好きだ。


「・・・またここにいるのか」


相変わらず教会にいる新藤に向けて言う。


俺が教会に行くと、たいていいる。


「あんた、本っ当にヒマ人だな」


「失礼ですね、わたしは忙しいんですよ」


しれっとした顔で言う。


どう見ても忙しい人間には見えない。


「失礼なのはお互い様だ。いつも人の練習をタダ聞きしてるんだからな」


「いいじゃないですか。減るもんでもありませんよ」


「もう勝手にしてくれ・・・・・・」


俺はピアノに向かい合う。


なんとなく、見えてきた。


俺の音。


『・・・音を奏でられるっていうのは、とても幸せなことなんですよ・・・』


優子のあの言葉を聞いてから、手ごたえのようなものを感じていた。


でも、それはまだ漠然としていて・・・


答えと言えるものではなかった。


それでも、今までのように憂鬱な気持ちで音を奏でているわけじゃない。


それだけでも前に進めていると思った。


鍵盤を指でピン、と弾く。


俺は椅子に座って、演奏を始めた。