利己的ヒーロー


ごり、と倒れている魔王軍の男に銃口を突きつけた。
気絶の振りをしていたのであろう、男はびくっと身を緊張させる。


「金。あと脱・魔王軍。俺ちゃんエコだからさ、無駄な弾使いたくないんだよね」
薄く笑うその姿は正に悪魔だ。

「ひィっ」
赤毛の男と対峙していても表情を変えなかった5人の男達は、一斉に装備品を外し始めた。


「あの……、本当にあの方が…………?」
勇者の集金活動を眺めながら、長老が小声で聞く。

「まあ、信じたくはないが正真正銘ヤツが勇者だ」
「そぉよー? あぁ見えて強いんだから」
「はあ……」
カマちゃんとその仲間にいわれても信憑性はまったく無い。

「はいはいお待たせ様でーしたっと。んで、依頼はなにかね長老さん?」
懐が温まった勇者が長老に尋ねる。

「はい……できればこの話は勇者様だけに…………」
「ご指名だよご指名きましたよ俺ちゃんもてもてー! という訳でちょいとシツレイ」

ずるずるずると、何故か長老が引きずられ物陰へ。
ぱっと見、カツアゲされるお年寄りの図だ。