「そうだ!あの本を持ってきたよ」

「本当に?見せて!」

鈴祢は本を手にとると、あらすじのページを読み始めた。

僕は横からそれを見つめていた。

鈴祢の長いまつげが日に焼けた茶色い髪から見え隠れする。

いつも外でスケッチしてるから焼けてしまったのかな?

でも肌は白い。

日焼けクリームを塗っても髪は守らなかったのかな?

僕は鈴祢をずっと眺めていた。

「なんか…すっごい見られてるんですけど…」

「あっごめん。どうだった?」

「いいけどさ。ファンタジーなんだね?海を越えた大切な人を追い掛けていく…」

鈴祢は悲しそうな顔をした。

「うん。結構おもしろいんだかしてあげるよ」

「本当?ありがとう」

鈴祢はスケッチブックと一緒に僕の本を抱き締めた。

その時、チャイムがなったんだ。

残酷な音が僕の耳に流れ込んでくる。

それは鈴祢との別れの時間を告げる音。

僕は渋々立ち上がった。

「昼休み!ここで待ってるから…」

僕は目を見開いた。

鈴祢。君はなんて言ったの?

また会える…?

「うん!」

それから僕達は朝と昼この場所で会うようになったんだ。