男は通りに出ると右に曲がっていく。 そのせいで男が視界から消える。 けれどあたしは動けずにいた。 通りに出ることが恐ろしい、空気すらも恐ろしいと感じる。 助けてと誰にも助けを求めることができない。 すると男が再び現れた。 そして心底呆れたような表情で言う。 『…何してんだ』 『ごめんな…さ…』 恐ろしいものは恐ろしいのだ。 自分自身ではどうしようもないくらい、あたしは初めてのこの空間に飲み込まれていた。 そんなあたしを見て男は溜息をつく。