近寄って行っても黒猫は逃げない。 だから思わず隣にしゃがみ込んで、手を伸ばして黒猫の頭を撫でてみた。 「ニャー」 どこか嬉しそうに目を細めてそう鳴く黒猫。 どこかの飼い猫なのだろうか。 随分人に慣れているなと思った。 黒猫があたしを見上げた気がした。 けれど次の瞬間には再び裏扉へと視線を戻していた。 同時だった。 恐れていたことが起きた。 ―――――ガチャリ 重そうな音と共に裏扉が開いた。