「うん、行ったな」
扉に耳をつけて野崎は言った。
その様子を見ながら悠矢は呆れたようにため息をつく。
「なにやってるんですか、まったく」
「いやいや、これもお前のためだよ」
ほれ、と言って野崎は鞄からファイルを取り出し、悠矢に渡した。
「なんですか、これ」
悠矢はぺらぺらとファイルをめくって野崎に聞いた。
「アウィング症候群の患者の手記だよ。なかには歌詞や楽譜もある」
「歌詞、が……?」
「皆が皆、そんな声をもっていたんだ。そういうのを活かして職にありつくやつだっていただろう」
「でもこれ、読めません」
「訳はお前がやれ。暇潰しになるだろう。それに、なにかの役にたつかもしれないしな」
野崎が言った以外にも真実はあるが、悠矢はそれには気づかず、わかりました、と言った。
「ちゃんと訳すまで、それのことを誰にも言うなよ」
そう言って野崎は悠矢の病室を出た。
それを確認してから悠矢はファイルを置き、足の拘束を解きにかかった。
30分もかかった。
扉に耳をつけて野崎は言った。
その様子を見ながら悠矢は呆れたようにため息をつく。
「なにやってるんですか、まったく」
「いやいや、これもお前のためだよ」
ほれ、と言って野崎は鞄からファイルを取り出し、悠矢に渡した。
「なんですか、これ」
悠矢はぺらぺらとファイルをめくって野崎に聞いた。
「アウィング症候群の患者の手記だよ。なかには歌詞や楽譜もある」
「歌詞、が……?」
「皆が皆、そんな声をもっていたんだ。そういうのを活かして職にありつくやつだっていただろう」
「でもこれ、読めません」
「訳はお前がやれ。暇潰しになるだろう。それに、なにかの役にたつかもしれないしな」
野崎が言った以外にも真実はあるが、悠矢はそれには気づかず、わかりました、と言った。
「ちゃんと訳すまで、それのことを誰にも言うなよ」
そう言って野崎は悠矢の病室を出た。
それを確認してから悠矢はファイルを置き、足の拘束を解きにかかった。
30分もかかった。


