本当は先生とは違う電車に乗った方が、早く帰れた。
でもその時は1分1秒でも長く…先生といたかったから。

そして私と桃花は、先生と同じ電車に乗って…。


「じゃ、俺…ここで降りるな。今日は楽しかったよ!ありがとう。」

先生が手を振り、電車を降りる。
先生が行ってしまう…。
手紙…伝えたい…この気持ち!!

「「え…!!?」」

私は桃花の腕を引っ張って、駅のホームに降りた。
もう…後には引けない。
ううん、引かない。
ここから進むの…。

「え、どうした?門限は??」
「大丈夫です…。えっと…。」

大丈夫じゃないけど…。

誰もいない駅のホーム。
10分くらいで次の電車が来る。
沈黙が続いた…。

もうここまできたんだ。
大丈夫…渡すだけだから。

「あの…もう電車来るけど?相原さん何か言いたい事があるんじゃぁ…?」

先生…。

「先生、これ、手紙書いてきたんです!読んで下さい。」

ポケットに入れてた手紙を、取り出して先生に差し出す。

先生…受け取って下さい。
伝えさせて下さい。

手紙が先生の手に渡った。
4つ折りにされた4枚のルーズリーフ。

「帰ったら読む。ありがとう…。」

電車に乗った瞬間、私は桃花に抱き着いた。
渡せた?渡しちゃった?
分からない…けど…出るのは答えなんかじゃなく、涙だけ。
でもこれで…本当に良かったんだよね?

返事…くるのかな。
ただただ友達と電話したり、音楽聴いて気を紛らわしてた。
もちろん塾には行かなかった。
だけど何かしてなくちゃ不安で仕方なかったの。
ついこないだまでは、毎日のように会っていたのに…会おうとしなければ、こんなにも会わないものなんだね。

先生…今どうしていますか?
伝わったのかな?
ちゃんと届いたのかな?

先生…。