ガラクタのセレナーデ

 それでも、濡れた瞳で縋るように見詰めてくるいろはに、有坂は困り果てて、つい余計な事を口にしてしまう。


「本人に聞いたらどうですか?」


 「おい!」ともう一人の刑事が有坂を小突き、「仕方ねぇだろ」と有坂も言い返す。

 そんな二人に構わず、
「そうします!」
 と叫んで、いろはは走り出した。



 今朝まで居たアパートの部屋の前に立ち、いろはは戸惑いながらもインターホンを押した。
 だがそれに答える者はおらず、那智はまだ戻っていないのだと、いろはは肩を落とした。

 しばらく部屋の前で待った。
 だがやはり、那智は帰って来ない。
 それでも諦めきれないいろはは、そっと手をかけドアノブを回した。

 カチャリと音を立て、ドアは抵抗なくゆっくりと開いた。
 もしかしたら、那智はここに居るかもしれない、そんな期待がいろはを突き動かした。

 玄関で靴を脱ぎ、一歩一歩足を踏み入れる。
 寝室は遮光カーテンがひかれ、昼間であるにも関わらず、薄暗かった。

 目を凝らすと、部屋の隅に身体を丸めて座っている人影が、いろはの目に映った。