「こーはーる」


私の名前を大声で呼びながら、短い腕を左右に大きく振る恋がまだ中学生のように見えておもわず、微笑む。


「恥ずかしいから。大声で呼ばないでって言ってるでしょ?」


私は、恋に小走りで駆け寄り小声で訴えた。


「だってー。小春全然気付いてくれないんだもん…桜を見てばかりで」


「私、桜見てたの?」


「えぇー、見てたじゃん。なんだか、頬を赤らめてたけど?」


頬を赤らめていた?


そんなの気のせいだ。


私は桜を見て何を考えていたの?


それすらも覚えていない。