「きれいだね。
やっぱり…千里くんに言うのはありがとうだよ。
私、今久しぶりに心が落ち着いてるもん。
できるなら卒業前に千里くんに会いたかったな」
千里くんはふっ…と笑って言った。
「俺は気付いてたよ。
卒業前からずっと……
ずっと杏里ちゃんのことを見てた」
「え…？」
「そろそろ帰ろう、杏里ちゃん。
本格的に夜になっちゃう」
「そうだね」
私たちは立ち上がると、再び駅に向かって歩き出した。
駅に入る途中で、千里くんは振り返った。
「杏里ちゃん……
連絡先、聞いてもいいかな？」
ちょっと控えめに、ちょっと可愛らしく千里くんが言うものだから、私は即答していた。
「いいよ。
教えてあげるね」
それから列車を降りるまで私たちは無言だった。
「またね」
千里くんのその一言で別れた。
次また会える確率なんて低いのに…………。
