一歩一歩、あいつに近づく。

あいつの顔が見えないように下を向くあたし。

表情を変えずに、あいつの前をすっと通り過ぎる。



「牧村」

「…何?」

名前を呼ばれて無視するわけにもいかない。

あいつの前を通り過ぎた所で足を止めるあたし。



「泣いてたのか?」

あいつに見られてた…

瀬戸内に背を向けたまま、うつむくあたし。



あんたは、気づいてるの?

あたしの気持ちも、なんでこんなに苦しんでるのかも…



どうしてあんなことしたの?

あたしはもう、あんたと普通に接することなんてできそうにないよ。



あたしは自分の気持ちを表現できる言葉を探す。



でも、やっぱり…

あいつになんて言ったらいいのか、わからなかった。