瀬戸内が顔を上げて、至近距離であたしを見下ろす。

さっきよりも顔が近い…

体をねじって瀬戸内から離れようとするあたし。



「おい、無視するな」

おじさんの声もすっかり上の空。



「…触んないでよ」

小声で必死に訴えるあたし。

「しっ…」とささやく声に、瀬戸内のほうを向いた瞬間…

あたし唇に、柔らかいものが触れた。



今の…不慮の事故?

自分の唇に残る感触に固まるあたし。



あたし、瀬戸内と…

逃げることもできず、瀬戸内を見上げる。



「んっ…」

今度は、はっきりわかる。

何か言おうとしたあたしの唇は、瀬戸内に無理矢理ふさがれた。