美味しかった、んだ。


よかったぁ……。



「でも、違う」


「……へっ?」


安心したのもつかの間、タルトを食べている楓がいきなり口を開いた。


「ち、違うって、何が?」


思わず聞き返す。


「昔食べた店の味と違う」


店の味と違うってどういうこと……?


そんなあたしの心情を読み取ったかのように楓は続けた。



「確かに、見た目も材料も一緒かもしれない。だけど……」


「だけど……?」


「穂香の味がする」


……へっ?


あたしの味……?


「穂香の気持ちがこのタルトにこもってる。誰にも真似出来ない、特別な味」



「楓……」


床に座り込んだまま、楓を見上げる。


「俺は穂香が作ってくれたタルトの方がずっと好きだよ」


そう言って驚く程に優しく微笑んだ。