「何言ってんの。あたしにとって穂香ちゃんは娘みたいなものなんだからいつでも頼っていいのよ♪」
鈴さんの優しい言葉に、あたしはニコリと笑って頷いた。
鈴さんに手を振って、『彩』を後にする。
鈴さんはあたしの姿が見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。
楓のことがまた一つ知れて、タルトも思うように上手く作れたし本当、鈴さんには感謝しきれないな……。
帰りの電車に揺られながら、オレンジ色に染まる夕焼け空を眺める。
今度、旅館に行った時にはお礼に手土産でも持っていこう。
不意に鞄を開けて、タルトが入っている綺麗に包装された箱を見る。
楓、喜んでくれるといいなあ……
――バレンタイン当日
3―Cの前の廊下を通っているあたし。
普段はここを通って教室へは行かないけど、今日はバレンタインだしね。
楓がどれくらいチョコを貰っているんだか気になるもん……。


