ゆっくりと唇を離すと、暗がりの下でわずかに空人が頬を赤らめているように見えた。

あたしもなんだか気恥ずかしくて、心臓が痒くなる。


「手は、出さないんじゃなかったの」


照れ隠しに、そんなことしか言えないあたし。

空人は、ふにっと笑った。


「担保、ってことにならない?」


冗談めいた空人の言葉にあたしは苦笑する。


「こじつけたでしょ」


あたしがわざとらしく睨むと、空人はヒラリと笑ってかわした。


「いいじゃん。これからしばらく我慢するんだから」


空人はあたしの下唇をスッとなぞると、名残惜しそうにゆっくりと指を離した。


「次のキスは、賭けに勝ったらね」


いたずらに笑う空人に、あたしは笑みで返す。

仕方ないわねって、少しオトナぶった笑みを。