「あたしも、多分、空人が好きよ」


空人の顔がパッと華やぐ。
だけどあたしは言葉を続けた。


「だけどね、まだ怖いことがあるの」


ぽつりと、あたしは空人にそう告げる。

空人は何?と伺うように首を傾げる。


「空人が真剣に想ってくれてるのは分かる。だけどあたしは10代の“本気”が消えていくのを何度も見てきたの」


あたしの言葉の意図を悟ったのか、空人は口元をきゅっと結んだ。


「今は本気でも、この先は分からないわ」


あたしは本当に臆病者だ。
ただ好きって気持ちだけじゃ、一歩を踏み出すことができない。

本当に、弱い。

空人はしばらく考えるように黙り、そしてフッと表情を緩めた。


「じゃあ、賭けてみる?」


空人の思いがけない提案に、あたしはキョトンとする。

空人はいつの間にか、見慣れた自信満々な瞳を取り戻していた。