「―――――~っ!!」
下から顎を突き上げられた形になった拓海くんは、声もなく床に転がって悶絶する。
でも彼を心配する余裕なんて、声をかける余裕なんてまるでない。
だって……
鼻を押さえた手のすきまから、どんどん赤いのが溢れでてきてるんですよ!
その勢いはさながら滝のごとし!
大惨事です!
バレる前に逃げろ、だ。
あたしは痛がってる拓海くんを置いて、視聴覚室を飛び出した。
ごめんね拓海くん!
なにもかも、あなたがイケメンすぎるのがいけないの!
でもあたしの毛細血管の貧弱さが、それよりさらにいけないね!
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいと、
ひと気のない廊下を爆走ながら、心の中で繰り返し謝罪した。


