連れてこられたのは、使われることの少ない視聴覚室。
扉を閉めた拓海くんは、机に座って黙りこんでしまった。
ああ、やっぱり怒ってるよね~。
沈黙がいたたまれなくなって、あたしは3メートル離れたところでガバリと頭を下げる。
「ほんとにごめんなさい! 悪気があったわけじゃなくて、ただ紗知子の美少年レーダーが作動しちゃったっていうか! いや、それはどうでもいいんだけど……」
「聞いてたんだな」
「……はい。すみません」
悪気があろうとなかろうと、盗み聞きしたことに変わりないもんね。
怒られてもしょうがないよ。
ここに紗知子がいなくてなぜかあたし1人っていうのが、
ちょーっとだけ納得いかないけど。


