なんだか、兄弟にしてはよそよそしい会話だな。
陸斗くんはさみしげに笑ったあと、校舎の方を見上げた。
「綺麗な学校だね。ここ、サッカー部も強いんでしょ?」
「知るか」
「強いんだよ。実はここのサッカー部に声かけてもらったことがあるんだ。今度、部活の見学に来ようかな」
「この高校に入る気か」
「入りたいって言ったら?」
拓海くんは鼻で笑って、陸斗くんの手からお弁当を奪うようにとった。
「おまえが来るなら、俺は辞めるだけだ」
「兄さん……」
「さっさと帰れ」
「あ、兄さん!」
陸斗くんの呼ぶ声に振り返ることなく、拓海くんは校舎へ戻っていった。
残された陸斗くんは、悲しそうな顔で拓海くんのうしろ姿を見送っている。


