「あんたじゃねーわよ。相手の大学生がかわいそうって言ってんの。朝から女子高生に鼻血ぶっかけられるなんて、どんなプレイよ。ちょっとしたトラウマじゃないの。災難にもほどがあるわ」
「た……たひかに」
ごめんなさい大学生風のお兄さん。
せめてあの血まみれシャツが、元の白さを取り戻しますように。
それにしても、紗知子はほんとに毒舌だなぁ。
紗知子とは小学生からの付き合いで、あたしの残念な癖を知っている唯一の友だち。
派手めの化粧の美人だけど、性格がちょっぴりキツい。
でも昔からあたしを助けてくれる、頼りになる親友なんだ。
中学まではこの癖のせいで、男子にからかわれたりイジメられたりしたけど、いまは違う。
同じ中学校の生徒は、紗知子以外にいない。
あたしの鼻血のことを知ってる人は、他にいないんだ。
だから2年生になる今日まで、高校の友だちには隠してこられた。
「クラス替え、どーなってるかしらね」
「そうだねぇ……」
おお。よしよし、鼻血止まった。


