あたしは千円札を財布から出して、イケメンお兄さんの手の中にそっと差し込んだ。
「これ、クリーニング代れす。血液って時間経つと落ちなくなるのれ、ご自身で洗われる時は、はやべに水かぬるま湯れ洗ってくらさい。オキシドールもいいけど、重層とか、あと大根おろしもいいらしいれす。
ちなみにあらひはセスキ炭酸ソーダっていうの愛用してます」
愛用っていうかもう必需品です。
言いたくないけど、これがないとあたしの私服はすべて真っ赤になるんです。
イケメンお兄さんの反応がないまま、降りる駅に着いてしまった。
「あの、ほんっとーにごめんらさい! はやくクリーニング出してくらさいね!」
深く頭を下げてから、あたしは電車から飛び出した。
うう~、他の乗客の皆さんからの視線が痛い。
なんだか朝からついてないなぁ。


