急いでティッシュを出して鼻を押さえる。
ちょっと出血しすぎたみたい。
クラクラしてる。
「次の駅で降りて、駅員室に……」
「あ、大丈夫れす大丈夫れす! もーいつものことなんれ、すびません! ご迷惑おかけひまひた!」
周りの方々に頭を下げて、あたしはちらりと目の前に立つ人の様子をうかがった。
あたしの鼻血をモロに浴びてしまった、イケメンお兄さん。
またお顔を見るわけにはいかないから、首から下しか見られないけど、たぶんイケメンお兄さんは固まっている。
真っ白だったシャツが見事に真っ赤。
ううっ、申し訳なさすぎる。
「あのぅ……すびませんれした。大丈夫れすか?」
「…………。」
返事がない。
ただの屍のようだ。


