「紗知子―。準備できた?」
「できてるわよ。今日髪カラー入れる予約してんの」
「じゃあはやく帰らなきゃ……」
「野宮」
立ち上がると同時に、隣りから呼ばれて固まる。
なんだか嫌な予感がビシビシするから、隣りを向けない。
「野宮これからヒマ?」
拓海くんの、妙に明るい声。
これは絶対になにか企んでらっしゃる。
「いえ、まったくヒマじゃないです! やーもう忙しくて忙しくて!」
「あー、そんなにヒマなのか。ちょうどよかった。じゃあ野宮も一緒にカラオケ行くか」
ヒマじゃないって言ってるでしょうがぁぁぁぁぁ!
こんなにセリフを見事スルーされたの、生まれてはじめて!
びっくりしすぎて口をパクパクさせていたら、篠田さんが助け船を出してくれた。