「まあまあ。違うならいいんだ。よかった」
「はい?」
「ん。なんでもないよ。さあ、帰ろうか。荷物持つよ」
そう言って、久木先生はあたしの鞄をすっと取って歩きだした。
なんてスマートなエスコート。
さすがSMUH!
「先生、大丈夫です。自分で持ちますから」
「いいんだよ。俺が持ちたいんだ」
なーんて爽やかに微笑まれちゃったら、なんにも言えませんよ。
そしてあたしたちは、並んで学校を出て家まで帰った。
途中色んな女のコが久木先生をチラ見したり、振り返ったり、2度見したりしていて、
改めてこの人は特別な人なんだって思った。
こんな人があたしの家庭教師だなんて。
神さまが冷たいんだか優しいんだか、よくわかりません。


