「久木先生!」
にっこり笑顔で、ガラス戸を開ける先生。
「や。近くまで来たから、ハルちゃんと一緒に行こうかと思って。マズかったかな?」
「まずいなんて! そんなことあるわけないです!」
むしろありがとうございますですよ先生!
あなたは見た目通り、白馬に乗った王子様かなにかですか。
家庭教師兼妖精兼王子様なんて、大忙しですね。
なんにせよ大感謝です!
あー、助かった!
拓海くんの腕の間から抜け出して、久木先生のところに行こうとしたら、
強く腕をつかまれた。
「どこ行く、野宮」
「えっ。……えっと、か、帰るんですけど」
なんとか彼の手から逃げて、3メートル離れる。
拓海くんは、簡単にあたしの危険区域に入ってくるからすごく困るよ。


