歌姫はギタリストに恋をしたﾟ*｡㊤

「SaRAさん！いつも五十嵐さんのことは何て呼んでますか？」


ひとりの報道陣が、私に質問する。





「“慶”です」


私は報道陣に笑顔を返した。



「五十嵐さんは、SaRAさんのことを何て呼んでますか？」


慶はセキュリティーを解除しながら、首だけ報道陣に向けて…




「彩良」


…と、無表情で答えた。



セキュリティーが解除され、マンションの入り口の自動ドアが開き、私は報道陣たちに軽く頭を下げ、慶とマンションに入った。





マンションに入り、エレベーターのボタンを押す慶。




「おかえり」

「うん。ただい……ふっ」


頭にかぶっていたストールを取り、私にキスする慶。


慶にキスされた瞬間‥

慶に会いたくて会いたくて仕方がなかったサイパンにいた頃を思い出し、ちょっと涙が出た。


一瞬、唇が離れそうになった時‥私は慶の背中に手を回し、もう一度慶にキスをした。

会えなかった時間を、少しでも埋めるように・・・