「やめろよ!」



奏がそう言ってその女の人――真希さん?――を突き放した。



「ひっどぉい!前はさぁ、超受け入れてくれたのにぃ~」



何この人・・・。



「前は前だ!今は俺、真面目なんだよ!」

「ウソつかないでよ~。こないだ電話で『彼女にバレなければ考えてみる』とか言ってたじゃ~ん」



え?『彼女にバレなければ考えてみる』?



ウソ・・・だよね?



奏はそんな事言わないよね?



真希さんのデマカセなのは分かるけど・・・。でも、もし本当なら・・・。



あたしは耐え切れず家を飛び出した。



「おいっ!久留巳!」

「いやっ!来ないで!」



追いかけて来ようとする奏に、心にも無いこと言っちゃた・・・。



違う、違うんだよ・・・。奏、ごめんね・・・。



そんなんじゃないの。本当はそんなこと、これっぽっちも思ってないんだよ。



そう言いたくても、言えない。



あたしはただ奏と真希さんから逃げたい一心で、その場から遠ざかった。

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「寒い・・・」



あたしは、道端にあった公園に入ってベンチに座った。



そこで、こんな真冬にコートも着ずに来た事を後悔した。


しかも、お財布も持ってないから、温かい飲み物も、買いたくても買えない。


ケータイを持っているのがせめてもの救いだ。