「ねぇ、くるちんはyuzuのファンなんでしょ?」



隣で、あたしがおねだりされて買ってあげたコーラを飲みながら神奈ちゃんが聞いた。



神奈ちゃんは、お菓子の袋を持ってるだけで、あとは最初から持ってたポシェットと、さっき買ったコーラしか持っていない。



それに比べてあたしは、買った、大量の食材を両手に抱えている。



今はそんな帰り道。川辺を歩いていて、もうすぐ沈もうとしている夕日が凄いきれい。



「うん、ファンだよ。yuzuちゃんは神奈ちゃんのお姉ちゃんなんでしょ?世間って、狭いね・・・」

「柚子(ユズ)姉はテレビでのキャラではピュアで優しくて・・・っていいイメージだけど、実際はね、ドエロだし、イジワルだし、とにかく、テレビキャラと正反対なの!」



神奈ちゃんが楽しそうに言った。柚子とは、きっとyuzuちゃんの名前。



「そうなんだ~」

「あれ?嫌いになんないの?」



神奈ちゃんは、不思議そうにあたしの顔を覘いた。



yuzuちゃんとも、奏とも似ている神奈ちゃんの顔。



「だって、あたしが好きなのは、yuzuちゃんの歌だもん。そりゃ、内面のyuzuちゃんも好きだよ?でも、あたしはyuzuちゃんのファン。そんなんで嫌いになるんだったら最初から好きになってないよ」



あたしの言葉に、神奈ちゃんは嬉しそうに「ふふっ」と笑った。鼻歌も少し聞こえる。



この曲、yuzuちゃんのデビュー曲だ。



「この質問、自称yuzuファンの人、何人も聞いたけど、これで引かない人は久留巳ちゃんで最初だよ」

「・・・そうなの」

「うん、結局はみんな、歌なんか聴いてないんだよね」



「ううん、そうじゃないよ」って言えたらいいのに・・・。



「神奈ちゃんは、yuzuちゃんファンなの?」

「うん、あたし、yuzuファンだよ。でもそれは、家族だからとか、そういうんじゃない。第三者として、yuzuが好き」

神奈ちゃんはそう言って微笑んだ。