あと一週間でクリスマス。



時間が進むのが早すぎる気がするが、俺はそんなの気にしない。



去年はろくなことがなかったクリスマスだったから、今年は久留巳にいい思い出を作ってもらいたい。



だから俺は再び嫌いなバイトをする。



久留巳のためなら何でも出来る。



久留巳に「死んで❤」って可愛くおねだりされたら平気で死ねるかもしれない。



「久留巳、クリスマスに何かほしいものねぇ?」

「ミュージックプレイヤー」



そういう久留巳は、遠慮がない。



でも、久留巳のためなら頑張っちゃいます。



まずはバイト探し。



前にバイトした店は、厳しすぎて過酷だった。だから今回はそこではやらん。



「バイトならいいのあるけど?」



知り合いに紹介されたのは、イタリアンの店。



時給も悪くはないし、やってみる価値はありそうだ。



「お願いします」



そう言って頭を下げたのはバイト初日の事。



バイトは俺と、ギャル。



「じゃ、これ接客マニュアルだから」



優しそうなおばさん店長に渡された黄色いファイル。



・・・思いっきり『裏・極秘マニュアル』と書いてある。



こんなデカい文字で『極秘』と書いてあってみない奴はいないだろう。