『おはようございます。』
いつもこの言葉で始まる。
普段でも癖づいてて夜にもかかわらず言ってしまう時がある。
なんともアホ臭い。
おはようございますから一日が始まる。
今日も愛想笑いと飲みか。

はぁ・・・
ため息がでる。
こういう日は気持ちがなかなか上がらないから接客がいつもよりもきつい。

『葵さん疲れてますか?』

更衣室で着替えているとお店の子エリカちゃんに聞かれた。

『ん~なんか今日はやる気出なくって。』

『私もでないですよ~!』

いつものやり取り。
人見知りが元々激しい私はお店の女の子とは極力仲良くしない、仕事になれば口を聞いたりするけど、仕事以外では気を使うような事をしたくなかった。
飲み屋なんかとくにお互いの嫉妬や足の引っ張りあいが多い仕事だから、あまり距離をつめると相手の気持ちが見えたりして疲れる。
人見知りを超えて人嫌いになっているとも思うけど。
エリカちゃんは裏表がない子で分かりやすい子でもあって自然と仲良くなれた。
仕事も仕方が反対なのも余計仲良くなれた理由の一個かもしれない。

『今日も適当にやろっか。』

これが私の口癖。

『ですね~!』

二人で更衣室を出る。
着替えた早々フロアに出てお客さんがいると本当気がめいる。

『葵さん一卓お願いします。』

ボーイに言われてみると苦手なお客さんグループが座っていた。

『え~やだ・・・』

小さな声で返事をした。

『すいませんお願いします。葵さんじゃないとあの席ダメなんですよ。』

『・・・分かりました。』

自分のグラスを手に持って鏡を見て気持ちを入れ替えて席に向かう。

『すいませんお邪魔します~。』