そしてとうとうやって来てしまった、聖バレンタインデイ。
恋人たちが、日ごろの思いを確認しあう日。
そして悩める子羊たちが、愛を告白する決戦の日。
今朝はほとんどの女の子が、綺麗にラッピングしたチョコを持って登校していた。
世の中の女の子は、こんなにも恋愛しているのね……。
自分の不甲斐なさに、何だか少し落ち込む。
「エナちゃん!おはよん」
「あっ、ミーナ。おはよっ」
それでも私は、今日も“余裕”を装う。
「エナちゃんはいつチョコ渡すの?もうそろそろ好きな男の子教えてよー」
「内緒よ。子供には内緒っ!」
こんなに片思いに必死な“可愛い私”を、どうしてもミーナに見せられない。
「失礼なエナちゃん!エナちゃんのケチーっ」