「僕が電車であなたを見掛けて、一方的に気になってただけなんです。実は僕、アナタの名前も知らなかったりして……」

益々恥ずかしそうにうつむくタムラ君。


正直に言えば、突然声を掛けて来たタムラ君に、かなり警戒していた私だったのだけれど

そんな様子を見ていたら、何だか少しだけ気が抜けて――。


一応は

「私は後藤ミナと言います。うーん、どうしよう」

と言って悩んで見せるけれど


すぐに断らないのは、つまり断りたくない気持ちが少なからずあるからで


だから正しくは、悩むフリをする私だったりするのかも!