振り返ったりしない。
だって少し怖い。
シンジ、来てくれるかな?
って、僕がこんなでいいのだろうか?
……………。
教室に戻るとジローチャンが早速
「どうだった?」
と明るい笑顔で僕に聞いて来た。
「何とかOK取れたよ!」
多分……
「おぅ!ヤッタネ!今日は楽しみだなぁ〜」
ジローちゃんがウキウキしているのが僕に伝わる。
「さてと…次は数学か…」
僕は話題を反らすように次の授業の用意をしながら、壁ぎわに座る一人の女の子に視線を止めた。
香菜子さん…
僕が思いを寄せるヒト。
あぁ…もうすぐクラスが変わってしまうというのに
イケメンでもない僕が、告白なんてできっこない。
イケメンじゃないどころか、女子が
「直哉って何かオタクっぽいよね…」
と言ってるのを聞いた事があった。
だから僕が告白なんてすれば、クラス中の女子が僕を笑い、
香菜子さんにも迷惑を掛ける事になるだろう。
何もできないまま彼女の横顔を見詰めるのも残りわずかだと思うと、
知らず知らずの内にため息がこぼれるのだった。